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孔雀の窓

数年がかりで修復していた3点セットの「孔雀の窓」があります。色鮮やかな古いアンティークステンドグラスです。
当工房で修復を終え、一度は所有者の方に納品していたものですが、この度、所有者さまの別荘に取付けることになりました。その際、階段の吹き抜けの天井高に合わせて、一番下に新たに横長のステンドグラスを1点、また元々木製建具が入っていたスペースに合わせて細長いステンドグラスをT字の形に2点追加することで、1枚の絵のように仕立てることになりました。
↓元々、木製の建具に納められた開閉式の窓でした。
古い建具を取り外し、歪みを直すため、組み直しの修復をしました。
デザインに統一感を出すために、元々あった一番上のステンドグラスのデザインをそのまま生かしました。オリジナルを光に透かし、デザインを写し取ります。デザインは同じでも、オリジナルが作られた当時のガラスと同じガラスは手に入らないので、なるべく似た色と質感のガラスを選び、オリジナルと同じ絵付けを施すことで違和感のない仕上がりに。
上から2段目の横長のステンドグラスと中央縦長のステンドグラスも、オリジナルのデザインをつなげるような絵柄にし、ガラスも似たものを選びました。
全てのステンドラスの製作を終えるといよいよ取付施工です。
ステンドグラスの寸法に合わせて特注したスチールフレームに入れていくのですが、現場でのサイズ確認の時、いつもとても緊張します。何度も何度も確認しながら進めてはいるものの、フレームとステンドグラスのサイズに間違いがあれば納めることができないからです。でも今回も無事、サイズはぴったりでした! 今回はステンドグラスのサイズが大きく、枚数も全部で6枚と、かなり大掛かりな取付でしたので、作業は2日かかりました。設置場所が階段の吹き抜けのため、足場に上がっての高所作業です。
ガラス張りの階段ホールで一際目を惹く美しい仕上がりになり、所有者さまにも大変喜んでいただけました。
生徒さん作「2羽の小鳥の窓」ができました

昨年の夏から当工房のステンドグラス教室に通ってくださっているO様。ご夫妻で原村に移住され、当工房のお近くにお住いです。そのO様の初めての作品を、最近ご自宅に取付けました。施工は、なんとO様のご主人様。普段から木工をされていて工具を使うのも慣れていらっしゃるので、簡単な説明だけで取付完了。すごいです。
この「2羽の小鳥の窓」はO様が自分で描かれたデザインです。ステンドグラスを作るのは初めてでしたが、ご自身の絵を元にお好みの色のガラスを選び、葉の葉脈や小鳥の羽に陰影をつけるための絵付も取り入れて素敵な仕上がりになりました。
取付場所は北側の階段の明りとりの小窓です。北側というのは、眩しすぎず安定した静かな光が入るので、色ガラスがとても美しく見えます。ログハウスの壁によく似合う、素敵な窓になりました。
フランス製アンティーク窓のリメイクが完成しました

大変久しぶりの投稿です。なんとおよそ1年ぶり。この1年間、大きな作品の修復や取付をしておりました。それが一段落しましたので、この1年間の仕事を時間を遡ってご紹介していきます。まずは、まさに今日、修復が終わった作品です。
お客様がフランスから直輸入された2枚の窓。それを、割れたガラスの取り替えや補修をしつつ1枚の窓に仕立てる修復です。
19世紀後半フランスの絵付の窓です。同じデザインで2枚あります。リップルガラスという凸凹のあるガラスに絵付したり、赤い被せガラスの表面を酸で融かして透明にしたりと、非常に凝った技法を駆使した作品となっております。また、特筆すべきはガラスカット。当時の職人の腕自慢でもあったのでしょう、丸く抉られたガラスカットがされていて、見応えがありつつも、反面そこが弱点で、年月を経てその部分が割れてしまっていました。
今回は、割れたガラスを交換し、一部をブリッジで修復した上で、2枚の同じデザインの窓を上下につなげて1枚にするという修復をしました。
使われているリップルガラスは、青色の流れのある非常に美しいものでした。平らな面から線を絵付けし、さらに陰影もつけています。透かすと非常に美しいです。
完成! 2枚が違和感なくつながり、上下のリップルガラスの青色と、被せガラスの赤色が印象的です。中央部が透明なので、軽やかで上品な仕上がりとなりました。
マルタとマリア

こんにちは。
この夏に修復完了&納品した作品をご紹介します。
宗教画のステンドグラスで、題材は「マルタとマリア」。
9枚セットの大作で、中段の3枚にはキリストを中心に、跪いて話を聞く妹・マリアと、パン籠を持つ姉・マルタが描かれ、上段の3枚は凝りに凝った建築モチーフの多葉形アーチ、下段の3枚は天使像を中心にした装飾と飾り文字で構成されています。
いつもお世話になっているアンティークショップさんのコレクションで、組み立てると、縦3メートル、横2メートル以上になります。19世紀後半のベルギーのJ・B・CAPRONNIER作。パリの万国博覧会でも受賞したステンドグラス製作者の作品です。日本にある彼の作品はこれだけだと思います。
お客さまがご購入後、そのままでは建具に入れられないので、1枚ずつ割れや歪みを修復し、それぞれの縦横の寸法を揃え、外周を真鍮枠で補強して納品しました。昨年秋からの修復で、今年6月に完成して7月初旬に無事納品となりました。
このステンドグラスは非常に凝った作品で、様々な絵付技法が駆使されています。修復していると当時のステンドグラス製作者の意気込みが伝わってくるようでした。ガラスカットもあえて難しいことをしています。腕自慢の工房だったのでしょう。
妹・マリアの首元の大きな割れ部分は新たに鉛線を入れ直して修復しました。
姉・マルタの額にも同様の割れがありました。
両方とも、過去の修復者によって「ブリッジ」という方法で処置されていました。鉛の帯でガラスの割れ目を隠す処置です。今回は、今後のことを考え、ガラス同士が触れ合って大事な顔部分の割れが進行するのを防ぐため、H型の鉛線で組み直しにしました。
下段中央の天使像がとても美しかったです。 写真上部の床の木目の描き方も凝っていますよね。
ダマという技法で描かれた背景のカーテンの模様が美しいです。あと、全体的に、それぞれの人物の「手」の描き方が美しいなと思いました。
修復中は窓辺に作品を立て掛けてありました。とてもいい眺めでしたが、アトリエではスペース的に9枚全てを組み立てて見ることはできません。それは取り付け後のお客さまの楽しみです。
建具に納められ、9枚が組まれたらどんなに美しいでしょうね。これだけの大型作品はなかなかありません。私も修復者として貴重な体験をさせていただきました。感謝しています。