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2023 / 09 / 19  14:42

マルタとマリア

マリアとマルタ

こんにちは。

この夏に修復完了&納品した作品をご紹介します。

宗教画のステンドグラスで、題材は「マルタとマリア」。

9枚セットの大作で、中段の3枚にはキリストを中心に、跪いて話を聞く妹・マリアと、パン籠を持つ姉・マルタが描かれ、上段の3枚は凝りに凝った建築モチーフの多葉形アーチ、下段の3枚は天使像を中心にした装飾と飾り文字で構成されています。

いつもお世話になっているアンティークショップさんのコレクションで、組み立てると、縦3メートル、横2メートル以上になります。19世紀後半のベルギーのJ・B・CAPRONNIER作。パリの万国博覧会でも受賞したステンドグラス製作者の作品です。日本にある彼の作品はこれだけだと思います。

お客さまがご購入後、そのままでは建具に入れられないので、1枚ずつ割れや歪みを修復し、それぞれの縦横の寸法を揃え、外周を真鍮枠で補強して納品しました。昨年秋からの修復で、今年6月に完成して7月初旬に無事納品となりました。

このステンドグラスは非常に凝った作品で、様々な絵付技法が駆使されています。修復していると当時のステンドグラス製作者の意気込みが伝わってくるようでした。ガラスカットもあえて難しいことをしています。腕自慢の工房だったのでしょう。

 

 

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妹・マリアの首元の大きな割れ部分は新たに鉛線を入れ直して修復しました。

姉・マルタの額にも同様の割れがありました。

両方とも、過去の修復者によって「ブリッジ」という方法で処置されていました。鉛の帯でガラスの割れ目を隠す処置です。今回は、今後のことを考え、ガラス同士が触れ合って大事な顔部分の割れが進行するのを防ぐため、H型の鉛線で組み直しにしました。

 

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下段中央の天使像がとても美しかったです。 写真上部の床の木目の描き方も凝っていますよね。

 

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ダマという技法で描かれた背景のカーテンの模様が美しいです。あと、全体的に、それぞれの人物の「手」の描き方が美しいなと思いました。

 

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修復中は窓辺に作品を立て掛けてありました。とてもいい眺めでしたが、アトリエではスペース的に9枚全てを組み立てて見ることはできません。それは取り付け後のお客さまの楽しみです。

建具に納められ、9枚が組まれたらどんなに美しいでしょうね。これだけの大型作品はなかなかありません。私も修復者として貴重な体験をさせていただきました。感謝しています。

 

 

 

 

 

 

2023 / 09 / 07  10:28

ステンドグラスで肖像画を描きました

プレゼントの愛犬の肖像画を描きました

こんにちは。

9月に入り、原村はすっかり秋の気配です。今年の夏は、意識的にいつもよりゆっくりと過ごしました。

原村の夏祭りや諏訪湖の花火大会、近所の八ヶ岳自然文化園の「星空の映画祭」・・・。たくさんの夏のイベントを満喫しました。

もちろんステンドグラスの仕事も進めておりましたよ。

久しぶりの投稿ですが、順番にこの夏の仕事の様子をご紹介していきます。

 

まずは最新の仕事から。

ステンドグラスで描いたダックスちゃんの肖像画です。

うちの教室に通ってくださっている生徒さんからのご依頼で、生徒さんのお客様へのプレゼントとのこと。鮮やかなアンティークガラスでつくったステンドグラスのフレームは生徒さん作。そしてお客様の愛犬の肖像画が私の作。二つを組み合わせ、合作で仕上げた肖像作品です。

 

最初は生徒さんがガラスの配置を決めてフレームをつくりました。アンティークガラスの端切れを並べながら一番美しく見える配色で組み上げていきます。フレームができあがったら、お預かりしていたお客様の愛犬の写真を元に、私が肖像画の絵付けをしていきます。

 

 

 

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透明ガラスの上に釉薬で輪郭を取り、次に写真を見ながら筆で徐々に陰影をつけていきます。この写真は2回目の焼成の頃です。一度焼いてしまうと釉薬がガラスに焼き付けられて絶対に元には戻らないので、絵付けと焼成にはいつも神経を使います。夜中、家人が皆寝てしまってからが絵付けの時間。吐く息にも注意しながら、慎重に釉薬をのせて描いていきます。

 

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この写真は4度目の焼成の頃です。この段階になると目や鼻の色もしっかりつき、だいぶ似てきます。焼成を繰り返すとガラスが割れてしまうことがあるので、どこまで陰影をつけるか、絵付けの退き際を見定めるのも大切です。今回は背景に淡い水色を入れて、5回目の焼成で完成させました。

生徒さん作の鮮やかなフレームが光に映えて、すごく素敵な作品になりました。愛犬のダックスちゃんの優しい目元や柔らかい毛の感じ、湿った鼻の感じがうまく表現できていて、自分としてもとても気に入った作品になりました。喜んでくださるといいです。

2023 / 01 / 16  11:18

ベルギーのステンドグラス窓

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明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

久しぶりの投稿です。昨年末、修復のため長らくお預かりしていた作品が仕上がりました。全部で9点の大型作品だったため、すべての修復に2年かかりました。長期間のお預かりにもかかわらず、納品まで快く待ってくださったオーナー様に感謝しております。

この9作品は、ベルギーから運ばれた美しいステンドグラス窓で、オーナー様が、取り壊される邸宅の窓を1軒分すべて買い取って日本に運んできたというスケールの大きなストーリーのある作品たちです。長く倉庫で出番を待っていましたが、いよいよ取り付けが決まり、そのための修復を当工房が行うことになりました。倉庫からの運び出し、建具からの取り外し、新しい鉛線での組み直し、真鍮補強、磨き作業を経て完成した作品たちをご紹介いたします。

まずは倉庫からの搬出です。古い作品のため歪みもありましたので、捻りなどの負荷をかけないよう注意しながら建具を解体しました。搬出したのは3枚1組の窓が3セット。両開きの窓が2枚、その上に横長の窓が1枚、その3枚1組が古い木製建具に収まっていました。

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 ↑このような古い木製建具に入った状態で倉庫に保管されていました。かなり大型の窓です。ベルギーのどのような邸宅で使われていたのでしょうね。この「薔薇と青いリボンの窓」は同じデザインのものが2セットありました。「サンルームのような部屋で左右対称に配置されていたのかな」などと想像が膨らみます。持ち帰ってステンドグラスを取り外してみたところ、ステンドグラス本体のサイズが微妙に違っていたので、今回の修復では新しい建具に入れやすいように6枚のサイズ合わせをしました。

 

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 ↑こちらの「孔雀と花瓶の窓」は色彩が鮮やかで、とても華やかな作品です。上に入っている横長の窓がご覧の通りかなり歪んでいたので、これはすべてのガラスピースを一度取り外しての組み直しになりました。

3セットとも、木製建具に入ったままだと大き過ぎて運べないので、倉庫で1枚ずつ建具から取り外しました。それがかなり大変な作業でした。立派な木製建具は硬く、当時の職人技の木組みでとても頑丈に作られています。削ると木のいい香りがして、解体するのが惜しい気持ちもありました・・・。それでも窓を1枚ずつ取り外し、割れないように慎重に養生をして工房に持ち帰りました。

工房での作業は、それぞれのステンドグラスを窓枠から取り外すことから始めました。「ハツリ」と呼ぶ作業です。金属ヘラで窓枠とステンドグラス本体を固定しているパテを割り取り、さらに埋め込まれている小さな固定釘を抜き取ると、窓枠からステンドグラスが外れます。100年ほども経ったパテはとても硬いので、ガラスが割れないようにヘラの角度と力の入れ方を調整しつつ慎重に作業を進めました。

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窓枠からステンドグラス本体を取り外したら、作品の状態を確かめ、修復方針を決めていきます。アンティーク作品ですので、なるべくオリジナルの味わいを生かすよう、歪みの大きい作品のみ鉛線を全て組み直し、歪みの少ない作品は古い鉛線の一部交換で修復を進めていきます。鉛線を交換する箇所は、ガラスピースを慎重に鉛線から外し、残ったパテを掃除してから元通り配置して新しい鉛線で組み直し、割れたガラスピースは「ブリッジ」という方法でカバーします。

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組み上がったら、鉛線を染めていきます。新しい鉛線すべてにワイヤーブラシで細かい網目模様をつけ、松煙入りのパテをつめ、大鋸屑で磨いた後、馬毛ブラシで擦ると、松煙の黒色が鉛線の網目模様に擦り込まれ、美しい黒色になります。

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 最後に真鍮枠と真鍮棒で補強し、黒く染めて完成です。

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①孔雀と花瓶の窓(3枚セット)

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 ②③薔薇と青いリボンの窓(3枚セット) こちらは同一デザインで2セットあります。

 

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最後に磨き上げたステンドグラスは、ツヤツヤとガラスが光り、大変美しかったです。千切れた鉛線もすべて交換できたので、全体がピシッと整い、強度も出ました。建物に取り付けられたらどんなに素敵だろうなと思います。100年前の古いステンドグラスが新たな場所で再び輝く。その手助けができるこの仕事がとても好きです。

2022 / 08 / 25  15:21

久しぶりの投稿です

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こんにちは。ずいぶん久しぶりの投稿です。なんと5ヶ月ぶり。ずっと大型作品の修復にかかりきりで、気がつけば夏も終わりに。原村は夏の勢いが鎮まり、朝晩はすっかり秋の気配です。

今、アトリエで修復中なのは、3枚組の大型窓が2点、そして9枚組のパネル(9枚を組み上げると横幅2メートル×高さ3メートルになる大型作品です)、そして高さ2メートルの窓が2点。どれもアンティークのステンドグラス作品で、非常に美しいものです。完成しましたらまたご報告いたします!

合間合間にも修復のご依頼があり今日はそのうちの1点をご紹介します。

県内のお客さまからご依頼いただいたのがドアの嵌め込み窓の修復です。強い風でドアがバタンとなった衝撃で、平らだった窓の中央が飛び出してしまい、横からみるとちょうど富士山のように山型になってしまったとのこと。

経年劣化と変形で鉛線がちぎれてしまっていたので、鉛線をすべて取り替える修復になりました。

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大型の窓ではないものの、小さなガラスパーツが組み合わさった凝ったデザイン。すべてのガラスパーツの配置図を描き、鉛線の組み順を確認してから全解体し、同じ組み順になるように組み直します。今後同じような破損が起きにくいように、以前より強度のある真鍮線の入った鉛線を使用しました。

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 ピシッと組み上げた作品を見ていただいて、ご依頼者さまにとても喜んでいただけました。

 

 

 

2022 / 03 / 07  11:53

「桜」と「紅葉」の窓ができました

「桜」と「紅葉」の窓ができました

こんにちは。すっかり春らしくなってきたと思っていたら、昨日はまたうっすらと雪が。原村は春と冬がいったりきたりの季節です。

 

一昨日、また新しい窓を納品しました。名古屋のOさまからご依頼いただいた「桜」と「紅葉」のステンドグラス窓です。Oさまから「こういうデザインで」と原画をいただき、その原画のイメージをステンドグラスで再現しました。

 

 

下の絵がOさまからいただいた原画です。2枚で1組、それぞれ春の山に咲く桜と水面に揺れる紅葉が描かれています。季節感のある優雅なデザインですね。洗面所など室内の間仕切りドアに入れる窓のため、透けない乳白色系のガラスでつくることになりました。

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 Oさまにいただいた原画を、ステンドグラス用のデザインに調整したのが下の絵です。ガラスの切り方やつなぎ方を考え、強度が出るようにするとこうなります。いただいた原画より線が増えますが、黒い線のつながり方が特徴的で、よりステンドグラスらしい感じになります。

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色を塗って、ご提案用の原画が完成です! Oさまに見ていただき、ガラスの色のご希望を伺って本製作に入りました。

春の桜は数種類のピンクのガラスを使い分けて、立体感や薄墨がかった部分を表現してみました。ちなみにステンドグラス用のガラスで一番高価なのがピンクのガラス。透明なピンクガラスは「ゴールドピンク」といわれ、金で発色されるのです。紅葉の方は、若干透け感のあるガラスもとりまぜ、水流や波紋の青のグラデーションと紅葉の赤が鮮やかに引き立てあう色使いにしてみました。葉色の変化が美しい紅葉の葉は、赤をメインに、緑、オレンジ、黄なども使い、自然な感じに。

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4枚とも縦横20センチほどの小さな窓ですが、ひとつの窓につき50〜80ほどのガラスピースを使います。桜の花びらに細かな切れ込みを入れたり、1センチにも満たない小さなピースを使ったりと、小さいながらとても手のこんだ繊細なつくりの作品となりました。

 

そして完成!

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間仕切りのドアに入れる窓なので、日常のドアの開閉動作でガラスが割れないよう、ステンドグラスを囲む鉛線のまわりにさらに真鍮の枠を付け、しっかり補強してあります。優しい色合いの春の桜と鮮やかな秋の紅葉。美しいです。完成した窓を見て、Oさまご夫妻がとても喜んでくださいました。「頼んでよかった」と言っていただけたこと、本当に嬉しく思います。

 

 

 

 

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