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2022 / 02 / 15  14:06

チャールズ・イーマー・ケンプ作品模写による「天使の半円窓」

チャールズ・イーマー・ケンプ作品模写による「天使の半円窓」

こんにちは。久しぶりの投稿です。

昨年末からの納品ラッシュ、2月に入りようやく一息つきました。この間、大型のアンティーク窓の修復や新築の住宅窓などを手がけておりましたが、今日はそれらの中から昨年12月に納品した「天使の半円窓」をご紹介します。

 

ステンドグラス窓をご依頼くださったのは千葉市にお住いのNさま。「天使の顔を描いた小さなステンドグラスを1枚持っているので、そのステンドグラスを使って、キッチンの窓をつくってほしい」というご依頼でした。ご自宅に下見に伺ったところ、キッチンには2つの半円窓がありました。せっかくなら2つの窓をお揃いのデザインでつくりたいと思いましたが、デザインを揃えるためにはNさまのお手持ちのステンドグラスだけでは足りません。そのため、お手持ちのステンドグラスと対になるように、もうひとつ新たに天使の顔のステンドグラスをつくることにしました。

Nさまがお持ちの天使の顔のステンドグラスは、19世紀イギリスのステンドグラス職人、チャールズ・イーマー・ケンプの作品の模写でした。そのため、新たにつくるステンドグラスは、ケンプの同作品に描かれた別の天使像としました(ケンプのこの作品には、美しい衣装を着けた4人の天使像が描かれているのです)。

左右の窓にバランスよくおさまるよう、顔を右向きにした天使像を選びました。これをガラスに絵付けしていきます。

向かって左側が見本となるケンプ作品です。見本を見ながら、グリザイユ(釉薬)を使って透明ガラスに模写していきます。線の太さ、濃さ、陰影のつけ方など、本物そっくりに描きます。ちなみにこの作品のような人物の髪の毛を描くときに使うのは鳥の羽。弾力のある軸で、表情豊かな線がひけます。

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まずは輪郭線を描いて窯で焼成。そのあと、だんだんと濃く陰影をつけ、何度も焼成を重ねます。

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顔や手、翼や衣装など、パーツごとに絵付けと焼成を重ねていきます。今回は微妙な陰影の作品なので、完成まで5回焼きました。

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最後にシルバーステインで髪や冠に黄色の着彩、焼成して絵付けは完成。美しい横顔の天使ができました。次はそれぞれのガラスパーツを細い鉛線で組んでいきます。

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天使のメダイヨン(円形メダル)のまわりに淡い色のアンティークガラスを嵌めていきます。 

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半円窓の完成です。

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美しい天使の顔、翼、真珠のついた衣装など、とても繊細な絵付けのメダイヨン。Nさまご指定の淡い背景のアンティークガラスも上品で、素晴らしい作品になりました。Nさまのお手持ちの天使の顔の窓も同様のデザインでつくり、2枚の半円窓が無事完成! 

「クリスマス前に窓に取り付けたい」とのご希望により、すぐに千葉市のご自宅に取り付けに伺いました。長野から久しぶりの東京を経由して千葉へ。Nさま、なんと素敵なランチを用意して待っていてくださいました。クリスマスに向けて美しく飾られたお部屋でいただくランチの美味しかったこと。感激しました。

ステンドグラスのサイズに合わせてつくった半円アーチの木製サッシを持参し、現場で微調整しながら既存の窓の内側に嵌めていきます。半円アーチのサッシは少々取り付けに苦労することが多いのですが、今回はとてもスムーズにいきました。

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無事、2枚の窓の取り付け完了です。明るいキッチンなので、ステンドグラスを入れるには最高でした。光が透けてとても綺麗です。相談を重ねて決めた青いガラスが効いています。Nさまご夫妻がとても喜んでくださり、嬉しい気持ちになりました。クリスマスに間にあってよかった!

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